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小説を複数視点(主人公が二人以上)で書く時のこつ・気を付けたいこと

父母の似顔絵

こんにちは。

児童文学作家の嘉成晴香です。

今日は小説の話。

小説には、

  • 一人称(主人公の視点)
  • 二人称(主人公を読者の「あなた」として進める)
  • 三人称(ナレーターのようにストーリーを進める)

と、語り手は3種類あると思います。

そしてもう一つ。

  • 視点が一つ
  • 視点が二つ
  • 視点が三つ(それ以上も?)

と、視点を変えてストーリーが進むこともあります。

この視点が変わる物語の場合、だいたいは一人称が多いかな。

章ごとに主人公がちがう、あれです。

さて、私は視点が3つ(つまり主人公が3人)の小説『星空点呼 折りたたみ傘を探して』でデビューしました。

特に長編小説執筆初心者さんの参考になれば嬉しいです。

結論から言いますと、複数の視点で書くのは大変ですが、慣れるとめちゃくちゃ楽しいです。

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複数の視点で小説を書く時はそれぞれの主人公(キャラ)・環境に個性を!

2視点以上で書く場合、これはとっても大事。

似た二人を書くのも悪くないとは思いますが、それなら二人をとりまく環境や世界に変化をつけなければ、物語はなかなか進みません。

と言っても、物語の核となる一点だけ「共通点」を持たせておくと、そこから物語を動かしやすいです。

隠れ「一点」も必要。

はるか

これがあると、、伏線も作りやすい。

複数の視点で書く時は、常に「複数で書く意味」を問いつづけることが、まとまった小説を書く秘訣だ、と私は思います。

複数の視点で小説を書く時は主人公達の関係を重視する!

上記した、「何のために複数の視点にしたか?」ということを常に意識することは、とても大切。

つまり……主人公達は何らかの形で関わる必要があります。

最終的に、互いがいなければ物語が成り立たない状態にしなければなりません。

  • 兄弟
  • 友達
  • ただのクラスメイト
  • ものすっごい赤の他人

とまぁ、最初からつながってる場合もありますし、関係ないことも。

兄弟や友達のように、最初から関係がある場合、

  • 関係の変化を描ける
  • 小説序盤から互いの視点に登場させやすい

といった利点が。(他にもあるでしょうが)

全く関りのなかった他人の場合、

  • 出会いがまず「サプライズ」にできる
  • 他の主人公を遠くから見る役目を果たしてくれる(それぞれの主人公を客観的にとらえられる)

一番大きいところは、ここかな。

主人公達の関係も、

  • 何か大きな事件があって関係を築かせる
  • 徐々に互いを引き寄せる
  • 一方的に想わせる
  • 一方的に逃げさせる

など、いろいろあります。

どうやって融合させていくかは、私にとってはほんとに化学的なものです。

ざっとプロットをあらかじめ立てても、できあがりはもっと濃くて複雑なものになったり、ならなかったり。

複数の視点で小説を書く時の利点!設定やシーンの詳細・裏側を書きやすい!

複数視点だと、何がいいって、これがいい!!

はるか

一視点の一人称だと、どうしても主人公からの「意見」「思想」しか書けませんが、複数なら書きやすい!

あまりやりすぎはよくないですが、一つのシーンを主人公を変えることで全く別物のように書き込むことができるんです。

そうすることで、

  • ひどいやつが、実はいい人
  • ひどいやつは、実は切実な事情があった
  • いいやつが、実はずるいやつだった
  • 器用な人が、実はものすごい努力家
  • ただのクラスメイトが、実は宇宙人

なんかの、「実は」が書きやすい!

これにより、読み手の「びっくり!」や「こっそり見てる感」を引き出せます。(希望的観測)

一視点の一人称で書いて、徐々にあばくのも楽しいですが、早くネタバレ?しておくことで新たな事件を起こしやすく、ストーリーのテンポをよくすることができます。

早くページをめくりたくなるものを書きたければ、複数視点の小説はほんとおススメ。

はるか

ここぞ!というところだけ、同シーンをそれぞれで書いたり、設定を詳しく説明させたりもできる!

複数視点であると、少しぐらいシーンとシーンのつなぎがうすくても、何とかなることも。(気にならない)

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複数の視点で小説を書く利点!心情を互いに代弁させやすい!

これも、いい。

一視点だと、相手の気持ちは行動やセリフでしかわかりません。

でも、複数視点だと、はっきりダイレクトに言わせることができます。

そこには憶測も推測もなく、「真実」しかなく、その物語の中での「確実性」が増します。(ちょっと大げさですが)

読み手は、それによって無意識に「安心」を得られます。

「ほんまいかいな?」とか思わずにすむってだけですけど。

とにかく、二人称以上だと「互いのことをほんとはどう思ってるか」がはっきりしてスッキリします。

にごしたい場合や読み手に委ねる場合は、一視点の方がゆとりと遊びがあっていいかもしれません。ものによるけど。

複数の視点で小説を書く時にいつも考えること!主人公一人の文章(ページ数)の配分

児童文学で、読者対象が高学年の場合、物語にもよるとは思いますが、だいたいは原稿用紙180~200枚ぐらいを考えています。

そこで、考えるわけです。

本にするなら、目次があって、章があるのですが、その章をいくつにするか。

30も40も作るわけにもいかないし……(目次のページ、だいたい見開き2ページだし)

ってことで、

  • 原稿用紙20枚分くらいで交代(一人一人が、章になる)
  • あまり気にせず、きりのいいところで交代(章にあまり関係ない)
  • 一人の主人公の視点を一作で何回出すか?(私は一人3回は出したい)

を考えます。

視点が2つだと、全体の半分ずつを分けることになるわけですが、3つ(3人)だと……どうしよう。

なにも等分にすることもないと私は思ってます。

ABCの3人がいたとして、順番的に

A ⇒ B ⇒ C ⇒ A ⇒ B ⇒ C ⇒ A ⇒ B

と、Cで終わらなくてもいいと思うんですが、どうでしょう。

必然的に、Cの人の割合が減りますし、最後のABの語りの前にCの決着を「ある程度」つけなければなりませんが。

視点がいくつあっても、物語によっては「真の主人公」を決める必要があることもあるかもしれません。

それに、なにもABCと順番でなくてもいいかもね。

あまりにも出番が少ない主人公がいると、もうそれは複数視点にする意味があまりなくなる気がしますが……。

複数視点で小説を書く利点!主人公の誰かのファンになってもらいやすい!

人との相性があるように、やっぱり物語やその登場人物との相性ってあると思うんです。

それは、しかたないこと。

でも、書き手としては、できれば最後まで読んでほしい

登場人物のファンになってほしい

はるか

ということで、複数視点で書くと、「複数の主人公を深く書ける」ので、誰かのファンになってもらえる可能性が。

一視点だと、合わないと最初の数ページで読み手は本を閉じてしまう。

どうでしょうか。

みんな好きになれなくても、好きな主人公の番がきたら、すいすい読めたり、好きな主人公まではがんばって読もうと思えたり。

児童書の読み手の場合、男の子だと女子ばかりの主人公だと離れてしまうかもしれないし、逆もしかり。

けれど、主人公に男の子と女の子を迎えれば、最後まで読める……(かも)

子どものさんの中には、「 」の中しか読まない(セリフしか読まない)人もいるらしいので、

もしかして気に入った主人公だけ読む可能性もあると考え、他の主人公を飛ばして読んでもなんとか物語がわかるように……努めてます

(それでおもしろかったら、他の人から見た「お気に入りの主人公」も知りたいと思い、他も読んでくれるはず)

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複数の視点で小説を書く利点!物語・登場人物を動かしやすい!(3人はちょっと難しい)

主人公が二人だと、ものすごーく動かしやすいです。

もう、スムーズに動き過ぎて、これはこれであかんな、と思うくらい。

それぞれの主人公が「主人公」なので、遠慮することなく個性を押し出し、それがどう周りに影響するか計算しすぎなくていい。

けれど、視点が3点以上になると難しいです。

むしろ、4人も5人もいると開き直れますが、3人は、少なくないけど多くないからです

関係の組み合わせが、4通り……あるのです。(計算まちがってないかな?)

AB AC BC ABC

これを全部書かなければならない書けるのが、3人視点の醍醐味。

一つでもないがしろにすると、なんだかうすっぺらくなり、3人でいる意味がありません。

裏技として「実はつながってた」ってのもありますけどね。

伏線で連帯感をもたせる、とか。

なにはともあれ、誰と誰の関係を、

  • いつ
  • どんな風に
  • 何を使って

深くつながらせたり、あるいは離れさせたり。

はるか

これが、なかなか大変ですが、ほんとに楽しいです!

私が書いた3視点では、デビュー作の『星空点呼 折りたたみ傘を探して』の他に、『流れ星キャンプ 』があります。

 

複数の視点で小説を書く利点!年齢がちがう主人公を出しやすい・読者が年をとっても読んでもらえるかも?

書き手としての願い。

あわよくば、1回でなく、何回も読んでほしい。(何回も読みたいと思わせる小説を書きたい)

時間が経ってからも、作品を思い出してほしい。

特に児童書は、子どもから読めることが大前提なので、当然読者さんの多くは子どもさんなわけです。

つまり、若いのです。

大人になってから、もう一度読んで、またちがった感想、とらえ方をしてもらえたら、作家としてこれほど幸せなことはありません。

なので私は、あえて児童書でも「大人」を主人公の一人に迎えています。(全てではないけれど)

もちろん「一番メインの主人公」になることは(今のところ)ないのですが、ねらいはこう。

  • 「大人になったらこうかな?」と子どもさんに想像してほしい
  • 「大人でも、こんなこと思うんだ。子どもみたい!」とか笑ってほしい
  • いつか大人になる自分を想像し、未来に希望をもってほしい(ここ、一番大事)

これは、ただの登場人物の一人にしてしまうと、「自分のことのように」考え辛いかな、と。

また、読者のおうちの人も、読んで楽しいように。

そして最後は、かつて子どもだった読者が大人になった時に、同年代になった「主人公」と対話できるように。

はるか

ま、そんなに長く読まれる作品を書けなきゃ意味ないんですけどね(遠い目)。

大人を主人公にしなくても、主人公達の年を何歳かあけることで、気軽に「1年後・3年後」の自分を想像してもらうことができるかも。

読み返すきっかけにもなったらいいな。

 

さて、どうでしょうか。

書きなれないと難しいかもしれませんが、書いていてとってもおもしろいのが複数視点。

これに慣れてしまうと、一人称の一視点だけで書き始めると……

はるか

え? 小説ってどう進めるんだっけ? 全然動けないんだけど!?

みたいになります(笑)

感覚的には、複数視点の小説は、つながりある短編をいくつも書いているイメージです。

 

今度はどんなの書こうかなぁ。

私のお気に入りは、「全然つながりのなかった複数人が織りなすかけがえのない時間」かな。

子どものうちは、どうしても世界が狭くて、そのことにさえ気付かない。

でも、世の中にはおもしろい人や理解してくれる人が、今はつながれなくても意外と近くにいるかもしれない。

そう、希望を持ちたかったんです、私は。

なにも世界や宇宙にまで想像力を広げることができなくても、一人で散歩できる範囲にでも可能性の種は埋まってるし、芽が出てるかも。

そう感じたいんです、私は。

 

何かご質問などございましたら、こちらのコメント欄でもTwitterのDMでも、いつでもお待ちしております。

楽しい執筆活動になりますように!!

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