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父のカツサンドと母への白いくまの思い出

嘉成晴香です。

今日は、子どもの頃の思い出を。

どんぐりが落ちるような季節になると、毎年思い出すんです。

幼稚園ぐらいの時、母が入院しました。

その間、祖母のうちに行ったり、来てもらったりしていたけれど、父と二人だけで過ごすことも多かったんです。
今日は、その時の思い出を。

父の横顔とカツサンド

父は小さい私に寂しい思いをさせないように、考えてくれたのでしょう。
ある日起きると、

「今日はピクニックに行こう」

と言って、私に

「おにぎりとサンドイッチ、どっちがいい?」

と聞きました。
母は作るとしたらたいていおにぎりを作ってくれたので、その頃の私にはまだめずらしかった「サンドイッチ!」と答えました。

父はうんうんとうなずき、

「サンドイッチなら、カツサンドだな!」

と言いました。
その時の私は「カツ」の意味がよくわからなかったのですが、なんだか父が楽しそうにしていたので、(今も好物)

「うん、そうだよね!」

と答えました。

今だったらスマホがあるから作り方もすぐ調べられますが、その時どうやってカツの作り方を父は勉強したのでしょうか。

日頃、その頃はほとんど料理をしなかった父。

もしかすると勤務先の図書館から本を借りてきていたのかも。
あげれば終わり!みたいなのを買ってきたらいいのに、卵つけて、パン粉つけて……と、ちょっと焦げた大きなカツを作ってくれました。
あと、ハムときゅうりのサンドイッチもあったかな。
父が揚げ物をしているのは、それが最初で最後です。

カツを揚げている時の父の横顔を、今も覚えています。

真剣で、でもちょっと楽しそうだった。
キッチンは窓辺で、まるで父から後光がさしてるみたいだった。

私達はそれを持って、公園へ行きました。
味は覚えてないし、父も「おいしいよね?」みたいなことは言いませんでしたが、めいっぱい、おいしい顔をして食べました。

今も味をはっきり覚えています。
正直なところ、うーん、といったところでした。
でも、とってもいい思い出です。
父のやさしさが、嬉しくて嬉しくて、それだけでお腹いっぱいになるくらい。

母の入院とお守りの白いくま

あと、母が入院していた時つながりで、もう一つ。

母が入院する時、私の代わりになるように、何か貸してといいました。
病院のベッドに置いておくと言うのです。
私は当時ピンクのうさぎのぬいぐるみがお気に入りでした。
それはもう、誰が見ても、それがお気に入り。
「将来の夢はピンクのうさぎ」とまで言うほどに。

でも、私は二番手の白いくまのぬいぐるみ(手乗りサイズ)を母に渡しました。
だって、うさぎを渡したら、私が寂しいじゃないですか。
母は、きっとわかっていたことでしょう。
それが二番のものだって。

そして、初めて私が父に連れられて病室に行った時、まっさきにその「くま」が目に入りました。
そして、ちょっと痩せた母。
その時、しまったと思いました。
なんてことしてしまったんだと。
私はなんとしても、ピンクのうさぎを母に渡すべきでした。
母は「元気?」と言って私や姉に笑いかけてくれましたが、私はというと後悔の嵐で微妙な顔しかできませんでした。

母が無事退院し、くまが返ってきました。
それから私の一番は、そのくまになりました。
「前から一番よ」と、母に思わせるためではなく、きちんと役目を果たしてきた「くま」が好きになったのでした。

母には今まで申し訳ないことたくさんしてきたと思いますが、この「白いくま事件」は最大級の後悔の一つです。

白いくまとは、黒いくまになるまで遊びました。
とてもいい思い出です。

私はいい母になれるとは全く思わないけれど、とにかくいい母になれるように努力はしたいと思います。

と思うけれど、いい母ってどんな母でしょうね。

子どもの邪魔をしない親に、私はなりたい。

毎日いろいろあるけど、毎日一度は笑顔を向けたい。

感謝を忘れない母でいたい。

いい母の定義……たくさんありすぎて書ききれません。

なのに、それらが一つもできない日もあって辛い。

その辛さを抱きしめながら、また次の日へ踏み出す。

さぁ、今日もがんばろう。

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